Interview

あなたからあなたに - 浅野由記子

あなたからあなたに

Vol.13浅野由記子

ikawには、フィリピン語で“あなた”という意味があります。肌はあなた自身であり、あなただけのもの。あなたがあなたの味方でいること。あなたがあなたに寄り添ってあげること。

「あなたからあなたに」は、そんなブランド名に込められた“あなた”の物語を聞いてゆくインタビューコンテンツです。

第十三回は、ファッショナブルなカラーリングやデザインで支持を集める、ネイルサロン「be born(ビーボーン)」代表の浅野由記子さんが登場。ネイリストとして、二児の母としてポジティブなエネルギーを振りまく彼女に、現在の働き方を選択したきっかけやライフスタイルへの想い、そしてikawとの共通点まで幅広くお話をききました。

———まず最初に、「be born」を立ち上げられたきっかけについて教えてください。

ネイリストを始めて21年になるのですが、10年前に子供が生まれたことをきっかけに働き方について考えるようになりました。それまでは店舗の多いネイルサロンでマネージャーとして働いていて、当時は会社員のお客さまが多かったので、土日と平日の夕方以降がピークタイム。母親になったことで働ける時間に制限ができてしまい、自然とお給料も減り環境ががらりと変わってしまいました。

———女性の多い職場だからこそ、そういった不遇は深刻な問題ですよね。

そうなんです。働いているのは女の子ばかりなのに、結婚して子供を産んだら稼げない、好きに仕事ができないというのはネイル業界の衰退の要因にもなるだろうと思い、独立を決意しました。

———そこから2016年に「be born」をオープンされたんですね。

オープン当時はレセプションの隣に小さな部屋があって、保育士さんが常駐するキッズルームとしてお客さまの子供たちを預かっていました。来てくれるママたちにも施術中はリラックスできる場所を作りたいと思っていて。

———保育士さんがみてくれると安心して任せられますよね。今は間取りを変えられたのですか?

そうなんです。ありがたいことにお客さまの90%がリピーターさんなので、我が家も含めて当時の子供達がどんどん大きくなって、キッズルームを使わなくなってしまったんです。そこで、部屋の壁を取り壊して、展示スペースとして空間を利用するようになりました。

———あのスペースはどのように活用されているのですか?

わたしの好きなものを表現できるスペースとして、月に一度アートなどを入れ替えて展示しています。お客さまにとってネイル以外にも楽しくてワクワクするきっかけになれたらと思って。ほかにも、カウンセリングのときに出しているウェルカムドリンクも、月に一度のペースで新しいメニューを提供しています。

———来るたびに新しい発見ができる工夫が散りばめられているんですね。お店の名前の由来についても教えていただけますか?

「be born」という名前は、「新しく、生み出す、創り出す」ということをここで表現していきたいという想いを由来にしています。

———生み出すというのはクリエイティブだけでなくて、働き方などの価値観も含めて全体なんですね。

そうですね。うちでは香りアイテムも作っているのですが、五感の全てから刺激を与えられる場所にしたいという想いがあります。

———オープンされて8年、浅野さんがお客さまとの距離感やコミュニケーションの上で大切にされていることはありますか?

大人になると、定期的に毎月二時間会っておしゃべりできる友達との時間というのは、どんどん少なくなっていくと思うんです。手を取り合いながら、「先月話していたことはどうなった?」とか、たわいもない話を定期的にできるネイリストって特別な存在ですよね。友達以上でも以下でもない。

———友達じゃないからこそ話せることや仕事で関わっていないからこそ話せるということもありますよね。

かといって、かしこまった “お客さま” という感じでも正直ないと思います。「時間ができたから遊びにきた」みたいな感覚で来てくれるのが一番嬉しい。なんでも話せる近所のおばちゃんのような存在になれたらいいですね。わたし自身、そういったお客さまとお話する時間をすごく楽しみにしていて、お話をしながら、そっと相手の背中を押せるような色作りができたらいいなと思っています。

———カウンセリングのなかで求めている色を引き出すような?

そうですね。実際に、ネイルのことを何も決めずに来てくれるお客さまが多く、話しながら「今の感じだったらこういう色にしようか」とか、「疲れやすいだろうから穏やかな色にしよう」という感じで決めていくことも多いです。

———「be born」の強みや魅力、ブランドの精神などikawと通じる部分を感じることはありますか?

心を穏やかにさせてくれたり、自分のことを愛してあげるための時間やケアが今の時代絶対的に必要だと思っていて、そういう点でネイルとスキンケアの時間というのはとても似ていると思います。

———「be born」ではオリジナルのカラージェル「be born colorgel collection」もあります。このコレクションをスタートされたきっかけを教えてください。

「be born colorgel collection」はコロナ禍でスタートしたのですが、きっかけはロックダウンだったんです。夫はヘアメイクの仕事をしているので、我が家は夫婦ともに仕事を休まざるを得なくて。これまでずっと働きっぱなしだったわたしたちにとって、家族みんなでゆっくりとした時間を過ごした日々は本当に最高でした。バルコニーにござを敷いて、朝から昼、そして夕陽が沈むまで空の移り変わりを眺めたり、あのときは世界中が止まっていたので星もすごく綺麗だったんですよ。日本特有の色の美しさに心を奪われたことをきっかけにいろいろな書物を読むようになって、日本の色の魅力を学んでいくうちに、カラーコレクションの構想が生まれました。

———日常のなかにある自然のカラーと日本特有の色表現からインスピレーションを受けているんですね。

例えば、“白茶” というクリームホワイトの色があるのですが、その色は藁を炊いた時に出てくる湯気の色からきているのだそうです。コロナ禍をきっかけに知ることのできた日本人特有の素敵な感性を、若い世代にも伝えていきたいです。

———日々のスキンケアでikawを使っていらっしゃるとのことですが、最初に使った時の感想を教えてください。

ikawを知ったのは代表の白濱さんを通してだったので、彼女の発する言葉や纏う空気を見事に表現したプロダクトに驚きました。香りやテクスチャー、使用感がとにかく柔らかくて、優しく包み込んでくれる。スキンケアでここまで表現できるのかとびっくりしました。

———使い続けることで感じた肌の変化などもありましたか?

わたし自身はそんなに肌トラブルが多いタイプではないのですが、息子は小さい頃から冬場に乾燥が原因で皮膚の薄い肘裏や膝裏が荒れていつも掻きむしっていたんです。病院で処方された塗り薬を使ってもなかなか治らなかったのが、「ikaw skincare oil」を使うようになってからどんどん改善していって、今年の冬はなにも塗らなくてもよくなったくらい。また、思春期特有のニキビにも効果があるようで、塗った翌朝は赤みが引いていたりと子供の肌を通してikawの効果を実感しています。

———浅野さんが一日のなかで好きな美容時間はありますか?

一日の終わりにお風呂に入ってクレンジングをする瞬間が好きなんですよね。それこそ「ikaw moistskin cleansing oil」はとても気に入っています。ティントやウォータープルーフのアイライナーもするする簡単に落とせるので、拭き取りも二度洗いもせずにこれ一つ。化粧を落としていくことで自分自身も完全なOFFモードになれて、「全て落とした、はい今日はおしまい」という感覚。今までのクレンジングはメイクを落とすことが目的で香りはそこまで気にしていなかったんですけど、一日の汚れを落とす瞬間が特別な時間になりました。

———浄化するような。

そうそう、生まれたてのわたしに戻るような。その時間のおかげでON / OFFの切り替えもしやすい気がします。

———お仕事に子育てに忙しい日々のなかで、ご自身のバランスを保つために意識されていることはありますか?

「be born」のスタッフにはこれから子供を産んだりする可能性がある子たちもいるので、仕事と子育て両方の幸せを求めることができるということを見せたいという想いが強いです。仕事はやろうと思えばあと何十年も続けることができますが、子育ては本当にあっという間。わたし自身も一瞬だったと思うからこそ、仕事は仕事で思いっきりやりつつ、頭には家族を中心に置くように意識しています。

———そういった浅野さんの背中を間近で見ることで、スタッフの方にとっても励みになりそうですね。

もちろん、それでちゃんと稼げないと意味がないので、給料形態も従来のネイルサロンとは違うやり方に工夫するようにしていて、とにかくみんなにとって良くなる方向に日々試行錯誤しています。

———浅野さんにとって “心地よさ” とはどういったところで感じられますか?

心からリラックスできて、空の移りゆく時間をみていて気持ちいいと思える瞬間が一番心地いいですね。そういうふうに心穏やかにストレスなく過ごすためにも身体の健康が大切。だから、睡眠もしっかり取るようにしていて、毎日9時間は寝るようにしています。

———9時間はすごいですね。

だから元気なんです。それこそ子育てで3時間しか寝れない時期が5年間あったので、その反動でたくさん寝られることやリラックスできる瞬間が今は一番心地いいんですよね。気の知れた友達とゆっくり過ごす時間もそうだし、朝起きてカーテンを開ける瞬間やカーテン閉じる瞬間だったり。一日の移ろいを感じられるように、リラックスできる時間を大切にしたいと思っています。

———10代、20代、前職の経験を乗り越えて今の心地よさに辿り着いたということですか?

そうですね。10代、20代はオールしてクラブで遊んで、そのまま仕事に行くことももちろんしていたし、あれはあれで当時は心地よかった。でも、今は40代を迎えるにあたって本当に自分がリラックスできているからこそ、いろんな人と笑顔で話せたり、好き嫌いなく接することができていると思っています。昔は尖っていたこともありましたが、そういう時代を経て今は本当にピュアな素の自分でいられる。これからの40代をすごく楽しみに感じています。30代で自分が本来求めていることに気がつけるようになって、心地よさを自分で手に入れられるようになった40代ではどんな暮らし方や生き方をするんだろうって。

———最後にこれからやりたいことや目標はありますか?

子育ても落ち着いてきたので、気持ちを新たにネイリストとしての自分のチャンスや刺激を求めています。まだ準備段階なので詳しいことはお伝えできないのですが、今年は新しい働き方をすべく動き出していることもあり、今までとは違った緊張感を楽しんでいます。

浅野由記子(あさの・ゆきこ)

ネイルサロン「be born」主宰。19歳からネイリストとして活躍。2016年9月、学芸大学駅に自身のサロン「be born」をオープン。2020年12月には、セルフで楽しめるカラージェル「be born colorgel collection」を発売。ファッション業界のクリエイターや同世代の女性たちから絶大な信頼を集めている。

SHOP INFO
住所:東京都目黒区中央町1-15-21​ B1
電話番号:03-6338-4847
営業時間:月〜金 9:30~18:00 / 土 9:30~17:00
定休日:日曜日、祝日
HP:be born Instagram:@beborn_tokyo

Photographer /Masakazu Koga
Writer /Mikiko Ichitani

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